激しい心臓の鼓動を聞きながら、音のする方へ行くと、そこには布を被せられた檻が。
なんと唸るような音は奴隷の盛大ないびきだったのです。 なんだかこの状況が笑えてきてしまい、その後はすぐに眠りにつくことが出来ました。 次の朝、まだ寝ぼけ眼でぼんやりしつつ階段を降りていくと、奴隷が朝食の準備をしています。 彼女はもう起きていて、 「おはよう。よく眠れたかしら?」 と素敵な笑顔で迎えてくれました。 そして私は昨晩起こった出来事を話し始めました。 深夜にキッチンに行き冷蔵庫を開けたら突然機械音の笑い声がしたこと、奴隷が檻で寝ていることに気付かず、いびきに驚いたこと。 すると彼女が急に真剣な眼差しになりました。 キッチンの上の棚からカウボーイの形をした鉄枠のおもちゃを持ってきて、 「一回も最後まで出来たことないのよね。」 そう言いながらおもむろにそろり、そろりと枠に当たらないように、くねくねとした形をクリアしていきます。 カウボーイハットの急な曲がりがある部分に差し掛かったところで当たってしまい、 「ハーッハッハッハッハ、ハッハッハッハ」と笑い声。 夜中に聞いたあの音でした。 「私がロンドンへ移り住んだのが今から20年ほど前。 当時、90歳を超える高齢の夫婦と暮らしていて、とても仲良くしていたけれど、年々認知症が悪化していってしまったの。食事を皆でしていると、旦那さんは食べ終わった後に手元にある様々なものをカチャカチャと触り出すようになって。 現役時代はエンジニアで、やっぱり強烈に記憶に残っていたみたい。元々好きだったことだしね。 だから私はこのおもちゃを彼にプレゼントしたの。そうしたら、偉大な発明品だと言って、毎日楽しそうに触っていたわ。 彼が亡くなった後、これは思い出の品だったから私が引き取ったの。今まで一回も電池を変えてないけど未だに動くし、触れてなくても突然音が出たりする。何か伝えたいことがある時なんかは特にね。」 私は不思議な体験を幼少期からしてきたので、この話も妙に腑に落ちました。 昨日の出来事は、彼なりの私への挨拶だったのかもしれません。 その後も色々な話を続けていると、「ほんと、男ってどうしようもないわ。」 そう彼女が話した途端、「ハーッハッハッハッハ、ハッハッハッハ」 と彼が全くそうだねと頷くか如く、また笑い声が響くのでした。 Comments are closed.
|
AuthorSadistic Dominatrix, Archives
March 2021
Categories |